食品の包装材の中でも、圧倒的に保存期間を伸ばすことのできるものと言えば、缶詰を思い浮かべるでしょう。イギリス人が19世紀に開発した頃は、専らブリキ製の缶でした。日本でも大正時代からブリキの缶が製造され、魚介類や果物が缶詰として売られるようになりました。発売当初は缶を切るための道具を使い慣れていないため、苦労した日本人が多かったと言われています。道具自体も今ほど合理的で便利なものではなく、使うのに力を必要としました。その後は次第に軽く開けることのできる道具が開発され、缶切りは一般的なスキルとなっていきました。
缶もブリキ缶から進化を遂げて、スチール缶が登場するようになりました。スチール缶は強度が高く、耐腐食性もあることから、様々な用途で使用されるようになりました。使い終わったスチールも製鉄材料として利用できるため、リサイクル業者にも重宝されました。この影響は飲料業界にも及びました。というのも、それまでは飲料と言えばガラス瓶に詰められていたからです。スチール缶でビールを飲むことが出来るようになったのは画期的でしたが、一々缶切りに奮闘しなければならないのは面倒でした。当時は道具が付属しており、それを使って開けていたのです。しかし時代が進むと今度はアルミニウム缶が登場し、イージーオープン方式で簡単に開けられるようになりました。いわゆるプルタブ方式で、指を引っ掛けて引っ張るだけで飲めるようになったのです。プルタブ方式の開発は飲料の容量を変えることにも繋がりました。アルミニウム缶の特徴は冷えやすいことです。またスチール缶よりずっと軽いため、潰してから捨てることもできます。さらに飲み終わった後の空き缶からアルミニウム再生地金を作ることが出来るため、リサイクルに向いています。しかもボーキサイトから地金を作るよりも、遥かに効率よく行えるのです。他方、アルミニウム缶にもデメリットはあり、コストが高いことが挙げられます。